創業の地で守ってきた信用-裏切りは内部から!
こんにちは。全国対応の【総合探偵事務所GriT’s】です。
和歌山県湯浅町。 日本の醤油発祥の地として知られるこの町で、 創業百年を超える老舗醸造業者が直面した問題は、 信頼して採用した中途社員による 売上金の着服と二重帳簿という、 企業の根幹を揺るがす不正だった。
■ 舞台となった企業と問題の深刻さ
湯浅町内で醤油・味噌の製造・販売を手がけるG社は、 創業110年を超える老舗醸造業者だ。
全国的なブランド力こそないが、 地元和歌山県内の飲食店・家庭への直接販売と、 近畿・中国地方の食品問屋への卸売りを主力とする、 従業員25名の地域密着型企業だ。
5代目当主(50代男性)が経営を引き継いで10年。 伝統の製法を守りながら、 ネット通販・観光客向けの直売所など、 新しい販路の開拓にも積極的だった。
問題が浮上したのは、 ある年度末の決算作業の際だった。
「今年は製品の売上が伸びているはずなのに、手元の現金が思ったより少ない」
という5代目の違和感から始まった。
■ 問題の中途社員|「販売・経理を一手に任せた女性社員」
問題の社員(40代女性)は、 5年前に中途採用された販売・経理担当の社員だった。
前職は和歌山市内のスーパーで経理担当を10年務めており、
- 会計ソフトの操作
- 売上管理・入出金管理の経験
- 接客・販売の経験
を評価されて採用された。
採用後は、
- 直売所での販売対応
- 問屋・飲食店への訪問販売
- 売上の入金管理・帳簿への記帳
- 通販サイトの受注管理
を全て一人で担当していた。
「小さな会社だから、一人に任せることが多くなってしまった。それが全ての間違いだった」
■ 二重帳簿の発覚|「会計ソフトの記録と手元の数字が合わない」
5代目が気づいたのは、 会計ソフトに記録された売上と、 実際の入金額の微妙なずれだった。
外部の税理士に相談すると、 「会計ソフトの記録が、実際の売上より少なく入力されている可能性がある」 との指摘を受けた。
さらに詳しく調査すると、
- 現金売上の一部が会計ソフトに記録されていない
- 売上が記録されている日と、実際に販売が行われた日が合わない
- 一部の請求書が会計ソフト上で「未収」とされているが、実際には入金されている
という複数の不自然な点が確認された。
当社へ調査が依頼された。
■ 調査の方針|「売上の流れと担当社員の行動を確認する」
今回の調査では、
- 直売所・訪問販売での現金売上の実態確認
- 会計ソフトの記録と実際の入金の照合
- 問題の社員の生活実態・収入との乖離の確認
- 着服の手口・期間・総額の把握
を中心に進めた。
■ 着服の手口|「醸造業ならではの「季節変動」を隠れ蓑に」
調査を進めると、 着服の手口が明らかになった。
手口①:直売所での現金売上の一部着服
直売所での販売は、 担当社員が一人で対応することが多かった。
観光客・地元客から現金で支払いを受けた後、 その一部を会計ソフトに記録せず、 着服していた。
醤油・味噌の売上は季節によって変動が大きいため、 「今月は観光客が少なかった」という説明で、 低い売上を正当化することができた。
手口②:問屋・飲食店への請求書の二重管理
取引先への請求書を2種類作成していた。
- A版:会計ソフトに記録する請求書(金額が低い)
- B版:実際に取引先へ送る請求書(正規の金額)
取引先からの入金は正規の金額で行われるが、 会計ソフトには低い金額しか記録されていない。
差額分が担当社員の口座へ流れていた。
手口③:未収として処理した後の着服
一部の入金を「未収」として会計ソフトに残したまま、 実際には入金されている現金を着服するという手口も確認された。
「3つの手口を使い分けることで、単純な突合照合では発見しにくい構造を作っていた」
■ 生活実態の確認|「地方の賃金水準を超えた支出」
担当社員の生活実態を確認すると、
- 湯浅町内の賃金水準から見て、明らかに豊かな消費行動
- 高級ブランドのバッグ・衣類の購入が確認された
- 海外旅行を年に複数回楽しんでいる様子
- 家族への高額なプレゼントが複数確認された
「地方の中小企業の賃金で、この生活水準を維持することは不可能だ」
■ 着服の全容|「5年間で積み重なった総額」
調査と帳簿分析の結果、
- 着服の開始時期:入社から約1年後
- 月平均の着服額:約20万円
- 5年間の推計総額:約1200万円
「直売所の売上・問屋への請求・飲食店への請求、 全ての販売チャンネルから少しずつ抜いていた。 だから気づきにくかった」
■ 本人への対応|「プロの犯行だった」
証拠を提示すると、 担当社員は最初は強く否定した。
「私は正直に仕事をしてきた。数字の不一致があるなら、システムの問題だ」
しかし、 具体的な日付・金額・手口を示す証拠を積み重ねると、 最終的に認めた。
「最初は少しだけのつもりだった。でも、5年間誰も気づかなかった。 プロとして仕事をしていたが、不正でも同じくらいプロとしてやっていた」
という言葉が印象的だった。
■ 老舗企業ならではのダメージ|「信用を守ることが全てだった」
5代目が最も心を痛めたのは、 金銭的な損失よりも、 取引先への影響だった。
「問屋や飲食店へ正規の金額で請求しながら、 社内では低い金額で記録していた。 取引先は何も悪くない。でも、こういうことがあったと知れれば、 うちの信用に関わる」
当社の調査報告書を持参した上で、 弁護士を通じた説明と謝罪の場を設けることになった。
「創業110年の信用を守ってきた。 それが内側から崩されていたことへの怒りと、 気づけなかった自分への後悔が、同時にある」
■ 醸造業・食品業界での教訓|「現金売上の管理が最大の弱点」
この事案が示したのは、 現金売上が発生する小売・直売業態における管理の難しさだ。
- 現金売上は、カード決済と異なり記録が残りにくい
- 季節変動がある業種では、売上の増減が正当化されやすい
- 小規模企業では、販売・経理を同一人物が担当しやすく、牽制機能が働かない
■ 再発防止策
- 現金売上の毎日の現金照合(複数人による確認)の導入
- POSシステムの導入による販売記録の自動化
- 請求書の発行を担当者から切り離し、別の社員が管理
- 外部の税理士による月次の帳簿確認
- キャッシュレス決済の比率を高め、現金取引を減らす
■ まとめ
→ 現金売上と帳簿の記録は、毎日複数人で照合することが横領防止の基本です。
→ 販売・経理を同一人物が担当する体制は、牽制機能が働かず横領リスクが高まります。
→ 「売上が伸びているのに現金が少ない」という感覚を、見逃さないでください。
→ 季節変動の大きい業種ほど、売上の変動を横領の隠れ蓑にされやすいです。
→ 「創業からの信用を守るために」、まずはご相談ください。
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